石巻千石船の会の歩み

石巻千石船の会が創立されたきっかけは、平成7年4月から6月まで石巻市図書館で行われた「千石船展」でした。これは、矢口清志氏と辺見清二氏の二人の個人企画展で、江戸時代奥州一の湊として栄えた石巻湊を再現し、中心的役割を担った千石船に関する資料を調査、収集して展示されました。また、北上川の変遷、石巻湊の成り立ち、役所、米蔵、廻船問屋、千石船の船名、末裔資料など多岐にわたって展示し、見学者は千名を越えました。6月4日、石巻市図書館会議室において「末裔などの懇親会」を開催し、関係者の末裔、郷土史愛好家など40名が出席しました。千石船の末裔が一堂に会するのは初めてのことで、各家に伝わる遺品、口伝などの資料も公開されました。末裔を代表して山形又右衛門氏が「古里の偉大な歴史を現代の若者に伝え、街の活性化と将来の発展のため役立てて行きたい」と挨拶を述べました。

平成7年6月4日 廻船問屋末裔などの懇談会 石巻市図書館会議室

 当会では、これまで先進地の視察もかねて毎年研修旅行を行ってきました。平成7年度に酒田市への研修旅行を皮切りにこれまで、ひたちなか市、佐渡の小木町、青森県深浦、同県野辺地、福島県いわき市と平潟、岩手県大船渡、宮城県寒風沢、荒浜などを訪問し、千石船文化に触れると共に石巻との繋がりを調査、地元との交流などを行ってきました。これまでの研修旅行の足跡は下記に記します。

第1回研修旅行 平成7年11月25-26日、山形県鶴岡市、酒田市を訪問。羽黒山神社、致道博物館、出羽の雪酒造博物館、善宝寺、本間美術館、旧鐙屋、山居倉庫などを見学。酒田市文化財保護委員の高山先生にご案内していただき、千石船で栄えた文化を見聞。羽黒山では雪に見舞われる。35名参加。

第2回研修旅行 平成8年5月5日、かって石巻と共に栄えた浦戸諸島の桂島、寒風沢島へ千石船のあやかり石巻から船で行きました。当日は生憎の雨でしたが、石巻より38名、仙台より14名のあわせて52名の参加となりました。桂島では菜の花畑を歩き、明治期に廻船業などで財を築いた白石廣造の邸宅跡などを末裔の白石晋一氏にご案内していただきました。寒風沢島では、安政の仙台藩の軍艦開成丸の造艦碑、松林寺の若宮丸水主津太夫の過去帳、化粧地蔵を見学、日和山の方位石、遊女が水主を留まるように祈願したという縛り地蔵を見学。帰途は荒天の為、電車で帰ることになりました。

第3回研修旅行 平成8年11月9-10日、茨城県ひたちなか市、水戸市を訪問。ひたちなか市市史編纂委員の佐藤次男先生の案内で、那珂湊地区の、ふるさと懐古館、湊公園、寅賓閣、反射炉跡、大洗磯崎神社を見学。磯崎神社には遭難した千石船の碇が何頭も引き上げられていた。那珂湊は、江戸期より石巻との関係が深く、江戸へ向かう千石船の寄港地でもあり、米の陸揚地でもありました。現在、石巻市とひたちなか市は姉妹都市となっています。石巻市町よりのメッセージをお渡ししました。水戸では、弘道館、偕楽園など見学、28名の参加でした。 

第4回研修旅行 平成10年9月12-13日、佐渡島へ、早朝石巻出発、新潟よりフェリーで両津港へ佐渡金山を見学し小木町へ。小木町ではこの年復元された千石船「白山丸」を見学、実物の千石船の迫力に圧倒される。建造に関わった地元の石塚さん兄弟貴重なお話を伺う。資料館の民族資料の多さにビックリ、宿根木集落は昔の雰囲気を残す所でした。佐渡は遠く一泊の強行軍でした。16名参加

第5回研修旅行 平成11年6月20日、「気仙大工の里初夏を行く」岩手県大船渡在住の平山憲治氏、新沼留之進氏のご案内で、木造千石船復元船の第1号となった気仙丸を乗船見学、その造船技術に感心する。気仙丸は、気仙船匠会の新沼留之進棟梁の製作です。氷上神社、普門寺、長安寺、金刀比羅神社、気仙大工左官伝承館を見学。平山さんのユニークなご説明に感心。石巻から24名、大船渡から4名参加、充実した初夏の1日でした。

第6回研修旅行 平成11年9月4-5日、青森県深浦訪問。深浦にも石巻船が寄港した記録がある。白神山地麓の十二湖を見学、みちのく温泉では、夕日を眺めながら露天風呂を満喫。深浦円覚寺では、御住職のご説明で多数の奉納された船絵馬などを見学。深浦町歴史民族資料館では館長のご案内で千石船模型など見学。翌日は鰺ヶ沢を回り、岩木山神社におまいりする。18名参加。

第7回研修旅行 平成12年9月2-3日、青森県野辺地へ。まず、三内丸山遺跡を見学、規模の大きさにビックリし、ボランティアガイドの上手なご説明に感心。みちのく北方漁船博物館では貴重な木造漁船など見学し浅虫温泉泊。野辺地は東廻り海運と西廻り海運の交点である。生憎雨にたたられましたが長峰先生のご案内で、常夜灯、歴史資料館町内を見学。帰りは八戸に寄り蕪島近くの八戸マリエントを見学。19名参加。

第8回研修旅行 平成13年9月8日、岩手県江刺市、北上市へ。江刺市の愛宕神社(おだき)で船絵馬四枚を見、地域の方との交流。ここは北上川舟運で栄、ひらた舟で石巻まで米を運んだ舟運の要衝。北上市展勝地で北上川遊覧の舟に乗船、天気良く気持ちの良い川の体験。復元ひらた舟見学、みちのく民俗村でひらた舟の資料見学。南部藩と仙台藩の藩境塚を見学。25名参加。

第9回研修旅行 平成13年11月23-24日、福島県いわき市、茨城県平潟へ。小名浜の御崎で天保6年に遭難した明神丸船主末裔の会員も参加し、遭難現場を見て感慨ひとしお。いわき市八坂神社では石巻千石船遭難の貴重な古文書を見せていただき、歓迎を受ける。平潟では大和田様にこの湊の歴史の講義を受け町内を見学。平潟も千石船の寄港地である。18名参加。

写真左は、平潟の鎮守、鷹岡八幡宮から見た平潟港。現在の社殿は嘉永六年(1853)再建。諸国廻船より奉納寄付金を集め、その船数は162艘に及んだ。石巻の廻船も19艘の名がある。廻船の〆高金は50両に達した。(第9回研修旅行)
写真右は、荒浜の浦役人を務めた武者家の門前での記念撮影。前列左から4人目が現在の御当主武者さん。手にしているのは、阿武隈川舟運で米を運んだ時に俵の上に立てたといわれる御用札。その右となりは、今回ご案内していただいた澁谷先生。(第10回研修旅行)      
大船渡湾を快走する復元千石船「気仙丸」。気仙丸は平成5年に新沼棟梁が中心となって建造。その後、佐渡の「白山丸」大坂の「浪華丸」の建造にも携わる。現在本物の復元千石船はこの3隻だけで、実際に帆走できるのは気仙丸だけである。

第10回研修旅行 平成14年10月19日、宮城県荒浜、丸森、岩沼へ。荒浜は石巻と共にかって千石船で栄えた所。荒浜在住の澁谷先生のご案内で荒浜の歴史を学ぶ。また、江戸期に浦役人を務めた武者家末裔の武者様からは貴重な資料を見せていただく。川口神社、米蔵跡、亘理の悠里館を見学。昼は阿武隈川船下りで昼食。午後は丸森の斎理屋敷、岩沼の渡辺家庭園を見学する。25名参加。

第11回研修旅行 
平成15年9月15-16日、岩手県大船渡へ。千石船気仙丸の体験乗船、天気良く1時間あまりの体験乗船は素晴らしく気持ちよかった。東廻りフォーラム参加、千石船資料の展示と3名の先生方の研究発表はためになった。翌日は、豪華客船パシフィックビーナス号の入港歓迎式へ。名古屋などから来た方と一緒に気仙大工左左官伝承館を見学、5名参加。

第12回研修旅行 平成16年9月18日-20日 太平洋フェリーを利用しての知多半島研修旅行。初めての船旅でしたが海も穏やかで実りある旅でした。古の千石船の航路を辿り、仙台港から名古屋港へ、チャーターバスで知多市歴史民俗博物館、常滑やきもの散歩道、瀧田家、小野浦の船山車、和訳聖書発祥の地、内海の歴史資料館、市内巡見。斎藤先生のご説明で現地の方4名とも合流。十分に船旅を楽しみました。

第13回研修旅行 平成17年9月9日−11日 今回は太平洋フェリーでの北海道・白老町と伊達市への旅行。今年就航したばかりの新造船「ニューきそ」1万5千トンです。9日夜8時、仙台港出航し翌朝10時45分に苫小牧へ入港しました。チャーターバスで早速白老町の仙台藩白老元陣屋資料館を見学。詳しくご説明を受けて、仙台藩の蝦夷警備のことが良くわかりました。カニ御殿で昼食後、伊達市へ。開拓記念館、旧三戸部家住宅、迎賓館を見学。亘理伊達家の北海道開拓に思いを寄せました。19時苫小牧出航、仙台港へは翌朝9時20分に無事到着しました。参加者は24名でちょうどバスの定員でした。

白老町の仙台藩元陣屋資料館。雪田さんのご説明を受ける。仙台藩では白老に元陣屋(元とは元締めの元です)広尾、厚岸、根室、国後、択捉の出張陣屋を置いた。この陣屋は仙台藩の三好監物がそ造築にあたり、常時120名の藩士が駐屯。白老から道東、国後、択捉まで蝦夷地の3分の1の警固に当る。仙台藩のほか、松前藩、津軽藩、南部藩、後に庄内藩、会津藩も分割して警固に当たる。安政3年から戊辰戦争の明治元年までの12年間にわたり警固。官軍の攻撃で藩士たちは海路仙台に脱出してその歴史は終わる。
伊達氏の歴史は、明治3年に亘理伊達14代藩主邦成(くにしげ)が男女合わせて250名とともに入植。明治9年まで9回にわたり総計2681名が入植する。伊達氏の家宝は開拓資金のため売り払われた。いち早く西洋農具を導入し温暖な気候も幸いして開拓は成功する。右は、明治5年に建築された旧三戸部家住宅で、現存する最古の開拓農家。近くに明治25年建築の迎賓館がある。
敷地内には、大正4年に立てられた開拓記功碑がありこれは石巻の井内石で造られており文字は金華山神社社司の佐佐木瞬永です。写真左は苫小牧出航前の記念写真。海も穏やかで十分に船旅を楽しみました。

第14回研修旅行  平成18年7月16−17日 2年続けてフェリーの旅でしたが今年は青森で千石船「みちのく丸」が復元されたのでその見学がメインです。7月16日、25名のメンバーは一路青森目指して北上、途中秋田県の小坂町で郷土館を見学、鉱山で栄えた小坂町の歴史を学びました。その後、康楽館で芝居見物、2時間たっぷりの下町歌舞伎は初めての体験で、花道の脇の桟敷で面白く見ることができました。夜は青森市内で津軽三味線のライブで夕食です。その迫力に驚かされました。さて翌17日、みちのく北方漁船博物館で昨秋進水した「みちのく丸」を見学。その大きさにビックリ、本物の千石船を体験しました。その後、棟方志功記念間を見学、アスパムで昼食、石巻には無事18時半に到着しました。

  

第15回研修旅行  平成20年9月13日−15日 今年は、昨年台風のため中止になった「お伊勢参り」です。太平洋フェリー「きたかみ」に乗船し、24名のメンバーは3度目の船旅を満喫しました。伊勢神宮は連休のため、正月以来の人出とのことで「お正殿」の見学はあきらめましたが天気もよく皆様、内宮とおかげ横丁の散策を楽しんだようです。写真下左は「お正殿」へ向かう人の波  右は宇治橋の前で記念撮影。

  

第16回研修旅行 今年の研修旅行は、昨年に続き太平洋フェリーを利用しての2度目の北海道白老町への研修旅行です。7月18日−20日の日程で17名参加しました。凪もよく三陸沿いに北上し、11時苫小牧入港、あいにく午後1時過ぎまで雨で、登別の地獄谷は雨中の散策となりましたがやがて雨も上がり、。白老の仙台藩白老元陣屋資料館に着く頃は薄日もさしました。当館ではボランテティアガイドの平松幸子様よりご説明を受け、広大の敷地の陣屋跡も見学することができました。最後はアイヌ民族資料館(ポロトコタン)で資料館とアイヌ民族舞踊を見学、19時苫小牧港出港、短い時間でしたが船旅も十分楽しみました。写真左は安政年間に陣屋の藩士が故郷を偲んで移植した仙台の赤松。当時の赤松で最後に残された1本。写真右の資料を携えているのがガイドの平松さん。

   

 第17回研修旅行  久しぶりのバス旅行です。岩手県への旅で、北上川の源流を訪ねてと遠野物語り100周年を記念して盛岡・遠野市を訪ねました。まず、一関市博物館・北上川源流・盛岡市先人記念館を見学して繋温泉へ。翌日は盛岡市の下町資料館(御蔵)大迫のワイン工場、遠野市で伝承園、遠野市博物館を見学。天気にも恵まれ有意義な二日間でした。

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